トランプ政権による今後の健康保険とは?

2014年1月からスタートした、オバマ政権によるアメリカの国民皆保険制度‟オバマケア”。(正式名称:The Patient Protection and Affordable Care Act)
今年1月、ドナルド・トランプ氏が大統領に就任し、公約の中にオバマケアの廃止というものがありましたが、始まったばかりの国民皆保険制度が、わずか3年足らずで終わってしまうのか?と期待や不安を持つ方は、とても多いと思います。

この度、オバマケアの医療改革について、トランプ政権の共和党案が公開されました。
医療改革法案の名前は、The American Health Care Actです。

発表の中には、2017年も医療保険料は平均で25%上昇し、1/3の郡では州を窓口にした医療保険は、1社の保険会社しか選択できないそうです。

また、患者を受け入れるドクター側も、州を通じた医療保険を持つ患者は受け入れないとするドクターが多く、受け入れるドクターの数は、通常の医療保険と比較して34%も少ないと指摘しています。

この法案は、現在のオバマケアとは、何がどう違うのか?

改革法案の主な改革点について、下記にてご紹介します。

 

DELIVER RELIEF(税金・ペナルティを廃止して、安心な医療保険を提供する。)

 

【オバマケア税を廃止する】

雇用者の負担を増やし、保険料上昇の基にもなり、患者や医療関係者の選択肢をも減らしてきたオバマケア税を廃止する。

(この税金の廃止は、処方箋薬税、店舗での薬販売税、保険料税、医療機器税を含みます。)

 

【医療保険加入義務 ペナルティを廃止】

数百万の労働者、家族、雇用者に高い医療保険を買わせ、無保険者に対するペナルティを課してきたことを廃止する。

 

PRESERVE VITAL PATIENT PROTECTIONS (患者の保護を維持)

 

【加入拒否を禁止する】*オバマケアと変更なし

病歴や持病のある方に対して加入拒否を行ったり、それを理由に保険料の割増しを要求することを禁止する。

 

【26歳まで両親プランに加入可能】*オバマケアと変更なし

若年層の大人は、26歳まで両親のプランに加入することができる。

 

ADVANCE 21ST CENTURY REFORMS PROPOSED BY PRESIDENT TRUMP (トランプ大統領の21世紀改革提案)

 

【Medicaid改革】

*連邦では、低所得者向けのプログラムをMedicaidと呼びますが、カリフォルニア州では別名Medi-Calと呼びます。

 

「患者と州の安定ファンド」Patient and State Stability Fundを設立し、州に1,000億ドルの予算をつけ、国民のニーズに合った低所得者でも加入可能なプログラムを開発する。

(Medicaidを現代化して、ニーズに合ったものに変革すると言っています。カリフォルニア州では、同州に住む人口の1/3は保険料・医療費共にほぼ無料のMedi-Calという医療費プログラムに加入していますが、それに代わるプログラムのようです。)

 

【HSAの改革】

個人や家族がHealth Saving Accountを現在の2倍まで非課税で貯蓄できるようにすると言っています。

*Health Saving Account(HSA):医療費貯蓄を目的とした銀行口座が付帯されている保険プラン。非課税で年間$3,400まで貯蓄が出来る。口座の中に貯めたお金を、医療費、デンタル費用、処方箋薬、メガネ・コンタクトレンズ費用等に利用した場合は、非課税のまま利用できる。ただし、それら以外の目的で貯めたお金を使用する場合は、課税対象となる。)

 

【Tax Creditの改革】

雇用者を通じて医療保険に加入できない方、Medicaidなどの州のプログラムに加入できない低所得者、または中所得者向けとして、年間$2,000-$14,000の補助金を提供することにより、医療保険に加入する手助けをする。

 

その他人事担当者への影響

人事担当者への影響としては、次のようなことが考えられます。

 

1.雇用者のペナルティ廃止

現在はフルタイム、あるいはフルタイム同等の従業員が50名以上いる場合は、医療保険の提供義務があります。

従って2016年は医療保険を提供していない場合には、ペナルティ(従業員1名あたり$2,000 最初の30名を除く)の対象になりますが、このペナルティを2016年年初から免除する法案になっています。

 

2.個人のペナルティ廃止

個人は、年間で3ヶ月以上無保険期間があると、世帯収入の2.5%、または大人一人当たり$695、子ども一人当たり$347のどちらか高い方が、ペナルティとして支払う必要がありました。(2016年、2017年)

しかし、法案では2016年年初に遡ってペナルティを免除することになっています。

 

3.プラン継続義務

一方で、医療保険プランで63日以上続けて無保険期間があった場合は、医療保険に30%の追加チャージを課すことになっています。

 

4.高額医療保険税の延期

オバマケアでは2020年以降、年間保険料$10,200 (個人)$27,500 (家族)以上を支払っている場合、高額医療保険税を課すことになっています。税金の額は上記金額を超えた分の40%です。今回の法案では、この高額税の導入を2024年に延期することになっています。

 

5.医療保険税

オバマケアではグループ医療保険に医療保険税がかかっていますが、法案ではこれを2017年12月31日以降に廃止することになっています。

 

6.HSA税率上昇の廃止

オバマケアでは2011年よりHSAの使い道が医療費等の非課税に該当する使い道でない場合は、20%に上昇したが、これを2018年より、もとの10%に変更する予定です。

 

7.FSAへの雇用者のContribution

Flexible Spending Account(FSA)への雇用者からのContributionは、オバマケアにより$2,500に制限されましたが、この制限を2018年より廃止する予定です。

 

いかがでしたか?

医療費制度の新たな改革は、トランプ氏の様々な公約の中でも、特に多くの方の生活に影響を与えるものではないでしょうか。

無視をせずにはいられない医療費制度、今後も動向に注目です。

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